入居者死亡時の原状回復の流れは? 費用や告知義務などの詳細をチェック

入居者の死亡が発覚したら、できるだけ早めに遺品を片付けて原状回復を行わなければなりません。基本的に、原状回復は入居者の義務となりますが、孤独死の場合はどうすればいいのでしょうか。

原状回復の費用は誰が負担すべきか、どのような流れで行えばいいのか分からない方が多いはずです。

そこで、本記事では、入居者が死亡したケースにおける原状回復を詳しく説明します。

  1. 入居者の死亡が発覚したときの対応
  2. 入居者が死亡した場合の告知義務は?
  3. 原状回復の費用は誰が負担すべきか?
  4. 入居者が死亡した場合の原状回復の流れ
  5. 原状回復に関するよくある質問

この記事を読むことで、入居者が死亡した場合の対処法や原状回復の流れなどが分かります。悩んでいる方はぜひ参考にしてください。

1.入居者の死亡が発覚したときの対応

まずは、入居者の死亡が発覚したときの基本的な対応をチェックしておきましょう。

1-1.室内に入るときは警察と一緒に

入居者の死亡が発覚するケースはさまざまです。遺族が発見すれば、大家や管理会社へ連絡をすることになるでしょう。ただし、最近では孤独死が増えています。孤独死の場合は、連絡がつかなくなった・異臭や害虫の発生報告などによって室内へ入ることになるでしょう。その場合は、親族と警察に連絡し、警察に立ち会ってもらってから室内確認を行うことが大切です。親族以外の人が室内に入るときは、警察の立ち会いが必要となります。大家や管理会社が単独で入室すると、第一発見者として取り調べを受けなければならなくなるでしょう。

1-2.慎重に親族へ連絡することが大事

何らかの事件が発生した際は、貸し主が借り主の保証人へ連絡することになりますが、親族への連絡は慎重に行わなければなりません。事故が発生した場合、損害を請求する相手がいなくなってしまう恐れがあります。事前に親族へ高額な請求が発生することを伝えたところ、相続破棄されてしまい、貸し主が負担しなければならなかったというケースが起きているのです。そのようなことにならないためにも、貸し主は慎重に親族へ連絡しなければなりません。

2.入居者が死亡した場合の告知義務は?

ここでは、入居者が死亡した場合の告知義務について説明します。

2-1.自然死での早期発見は告知義務がない

入居者が死亡したケースによって、告知義務の発生も大きく異なります。一般的に、告知義務がないとされているのは、自然死で早期発見されたケースです。なぜ告知義務がないのか明確な答えはありませんが、自然死であれば聞かれない限りはいわなくていいという暗黙の了承があります。ただし、自然死でも死亡から結構な日数が経過している場合は、損傷が激しいため、次の入居者に知らせたほうがいいというところもあるのです。今後、不動産業界の状況によってはルールが変わるかもしれませんが、法律が変わらない限りは自然死=告知義務はないと考えていいでしょう。

2-2.事件性があるケースは告知義務がある

自然死とは違って、殺人・自殺といった事件性があるケースは告知義務が発生します。次の入居者から聞かれなくても、必ずいわなければなりません。動物だったら気にしないというケースもありますが、多くの人が気になる内容といえるでしょう。そのため、告知義務が発生するのはごく自然なことなのです。また、事件性があるケースと同じく、遺体の腐敗があるケースも告知義務が発生します。前述したように、遺体の腐敗が進行していると、異臭や汚れが建物に染み付いてしまうからです。入居者にとってはそれも気になる箇所なので、きちんと伝えなければなりません。

2-3.どこまで告知義務があるかはグレーゾーン

告知義務がないケースとあるケースを紹介してきましたが、正直なところ、どこまで告知義務が発生するかはグレーゾーンです。不動産会社でも意見が分かれていますし、専門家や弁護士などでもさまざまな意見を聞きます。ただ1つだけいえるのは、できるだけ詳しく告知したほうが後々トラブルにならないことです。

裁判になった場合、きちんと告知していなかったと分かれば負ける可能性があります。たとえ、裁判に勝利したとしても、悪い口コミを書かれる恐れもあるでしょう。トラブルにならないことが1番ですので、きちんと告知することをおすすめします。

3.原状回復の費用は誰が負担すべきか?

では、原状回復の費用は誰が負担すべきなのでしょうか。

3-1.原状回復の基本は貸し主の保証人または連帯保証人

基本的に、原状回復の義務が発生するのは借り主となります。ただ、貸し主が亡くなった場合は、保証人または連帯保証人がその義務を担うことになるでしょう。賃貸物件を借りるときは、必ず連帯保証人(保証人)をつけなければなりません。

つまり、連帯保証人は賃貸でも借金でも、借り主本人と同じ責任を負うというわけです。例外的なケースでない限り、原状回復の費用はすべて保証人が負担することになるでしょう。また、保証人は自分がやったのと同じ責任を負うことになるため、相続放棄をしたとしても原状回復の義務はなくなりません。

3-2.原状回復費用を出さなくていいケースもある

状況によっては、原状回復費用を保証人が出さなくていいケースもあります。たとえば、賃貸借契約書に原状回復の義務が記されていないケースです。めったにないことではありますが、この場合は本人でも家族でも原状回復の義務が最初からないことになります。

よって、連帯保証人になったとしても、原状回復を行う義務が発生しないのです。ただし、前述したように、このケースはめったにないことですので気をつけてください。あくまで法律的に可能性のあるケースという意味です。

3-3.違反がなければ貸し主の負担になることも

病死または心理的瑕疵(かし)が発生したとしても、借り主の善管注意義務違反があったとはみなされないケースがあるでしょう。その場合、連帯保証人に対して損傷部分の箇所を修繕するための費用を請求することはできません。

故意・損失・通常の使用を超えるような損傷は費用を請求できますが、その範囲に抑えられる場合は原則どおり、貸し主の負担となります。原状回復の義務は、あくまで、故意・過失・通常の使用を超えない範囲が対象なのです。

3-4.原状回復の範囲はグレーゾーン

賃貸物件や原状回復における内容など、グレーゾーンであることがたくさんあります。どこからどこまで原状回復をすべきかどうかも、正直なところ、賃貸物件や不動産会社・管理人にとって大きく異なるのです。

後々トラブルになりやすい部分でもあるため、契約書をきちんと確認しておかなければなりません。賃貸物件の契約書には、ほとんど原状回復の範囲や対象などが記載されています。手元で確認できない場合は、事前に不動産会社や管理会社へ問い合わせて確認しておきましょう。

4.入居者が死亡した場合の原状回復の流れ

ここでは、入居者が死亡した場合の原状回復の流れを紹介します。

4-1.相続人がいるケース

入居者が死亡した場合、親族に素早く連絡しなければなりません。相続人捜索後に貸し主が行うべき流れは以下のとおりです。

  1. 残置物の処理
  2. 原状回復・費用請求
  3. 家賃回収
  4. 賃貸借契約の解約
  5. 死亡原因・状況の確認
  6. 損害賠償請求
  7. 次回募集の告知内容

まずは、入居者が残したもの(残置物)を処分し部屋を明け渡してもらわなければなりません。貸し主が勝手に処分することはできないので注意が必要です。相続人に対して残置物の処分と原状回復をお願いすることになります。未収家賃がある場合は相続人に請求して回収し、賃貸借契約の解約を行ってください。

そして、どのような原因で死亡したのか、状況確認が必要です。死亡原因や状況によっては、相続人に損害賠償を請求できるケースもあります。そして、弁護士や管理会社と話し合いを重ねながら、どのような告知を新しい入居者にすべきか決めなければなりません。

4-2.相続人がいないケース

相続人がいないケースは、弁護士に相談することをおすすめします。そして、弁護士に家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらうことになるでしょう。相続財産管理人とは、相続人や相続財産の調査を行う人のことです。

調査結果を踏まえて、相続財産から必要な支払いを行ったり、残余財産を国庫に帰属させたりする役割を担っています。相続財産が少ない場合は、予納金から経費や財産管理人の報酬が差し引かれることになるでしょう。

4-3.未収家賃や原状回復費用を貸し主が負担することも

相続人がいれば未収家賃や原状回復費用を請求することができますが、相続人が相続破棄を行うケースもあります。相続破棄を行えば、プラスの財産だけで開くマイナスな財産も相続する必要がありません。

そのため、原状回復費用や家賃を支払う義務もなくなります。ただし、相続破棄をしたとしても、賃貸物件の電気・ガス・水道などの解約手続きは相続人が代行可能です。ただ、回収できなかった家賃や原状回復費用は、貸し主の負担になる可能性が高いでしょう。

5.原状回復に関するよくある質問

入居者が死亡した場合、原状回復に関する質問を5つピックアップしてみました。

Q.借り主が死亡したら賃貸契約はすぐに解除できるのか?
A.契約を交わした借り主が死亡したからといって、すぐに賃貸契約を解除できるわけではありません。契約者が死亡すると、賃貸借契約は契約者の法定相続人に相続されることになります。そのため、契約を解除するためには、その法定相続人から解約通知書面をもらう必要があるのです。ここで、注意してもらいたいのは、法定相続人は決して、1人ではないとういうことでしょう。子どもが複数いる場合は、すべての人からの同意を得なければなりません。また、遺産分割協議が終わるまでは、賃貸借契約は相続人の共有持ち分になるので要注意です。

Q.終身建物賃借契約とは?
A.入居者が死亡することによって、賃貸借契約が終了する契約のことです。前述したように、契約者が死亡すると、法定相続人が相続することになります。法定相続人から許可を得なければ解約できないことになっていますが、終身建物賃借契約を済ませておけば、入居者が死亡する=契約解約ができるというわけです。ただし、契約を交わすには、貸し主が都道府県知事の許可を受けなければなりません。

Q.貸し主がリスクを避ける対策は?
A.終身建物賃貸借契約のほかに、家賃保証会社を利用する方法があります。家賃保証会社を利用することで、未収家賃や原状回復費用を立て替えてくれるのです。会社によっては、一定期間の空室保証をしてくれるところもあります。また、保険に加入するのもリスクを回避する方法の1つです。

Q.孤独死の場合、借り主の所有物を勝手に処分してもいいのか?
A.入居者に相続人がいない場合は、貸し主が処分しなければなりません。ただ、すべてが無価値のものとは言い切れないため、法的な安全圏として弁護士などの専門家に相談するのも方法の1つです。弁護士と相談しながら片付けたほうが、後々のトラブルは回避できるでしょう。

Q.遺品整理をスムーズに終わらせるコツは?
A.専門業者に依頼することをおすすめします。遺品整理や不用品回収などを行っている業者に依頼すれば、時間と手間をかけることなくスピーディーに片付けることができるでしょう。また、遺体の腐敗が進んでいる場合は、素人では簡単に落とせない汚れやにおいが染み付いています。専門御者の中には、特殊清掃サービスを行っているところもあるので要チェックです。

まとめ

入居者の死亡が発覚した場合、状況によって原状回復の義務が異なります。自然死であれば、一般的な原状回復の義務が賃主の保証人に生じるでしょう。自殺の場合は損害請求が生じますが、自然死や孤独死による損傷は借り主の負担となります。腐敗が激しいと専門業者にハウスクリーニングを依頼しなければなりません。遺品整理を行っている専門業者もあるので、サービス内容などをぜひチェックしてみてください。